ルパンの知恵の輪

僕は、割と若いころから2か月に一度位のペースで札幌に休暇に行くのですが、

過去にあった事を話したいと思います。

 

狸小路のアーケードがないところにあるホテルに泊まりました。

食べるところはないかと思ったところ、すぐそばにラーメン屋さんがありました。

しかしその時、そのラーメン屋さんは「子ども食堂」をしている時間で、ラーメンを食べる事ができませんでした。

 

翌日、子ども食堂が終わる時間を見計らって行くと、一人の少年と出会いました。

もう少しでお母さんが迎えに来る様子で、

店の女将さんが「もうそろそろ帰る時間だよ」と言っても、

その少年は、「まだ遊びたいよ~、遊んで~」と言って聞きませんでした。

 

その時、少年はルパン三世の知恵の輪をずっと解こうとしていました。

その知恵の輪は大きく、またどう考えても解けるような知恵の輪ではないのですが、

それでもその少年はずっと解こうとしていました。

 

その姿を見て、僕は気づきました。

その時、僕はとっさに「なんだ解けないのかい、解いてあげるよ」といい、

適当に解こうとしているように見せかけて、誰も見ていない隙に太い知恵の輪の両端を力づくで広げました。

恐らくそれが唯一、その知恵の輪を解く方法だったのではないかと思います。

 

専務「ボウズ、解けたよ」

少年「わー、やったーありがとう」

 

少し経って、

女将さん「あら、これ壊れてるんじゃない? あらあら直さないと」

 

それで、少年は気づいた様子で、

嬉しそうに僕に抱き着きました。

 

その後、お母さんが来て、店の人と僕に見送られておうちに帰りました。

 

後から聞くと、少年のおうちはいろいろと複雑な環境の家庭だったそうです。


今、思い出しても涙が出てきます。

その少年の純粋さに触れられた事が本当に嬉しかったです。

そして僕も、ほんの少し粋なことが出来るようになったのかなと思うと、

僕も大人になったんだなと思いました。